家族は「家の前の畑」、日誌には「A」、地図アプリには別の登録名。呼び方がばらばらだと、記録を見返したときに、どの圃場の話か分からなくなります。
圃場管理の基本は、圃場ごとに変えない管理番号を1つ決め、呼び名・場所・面積を一覧にすることです。作物や作期のように作付けごとに変わる情報は別の表に書き、日誌やアプリでも同じ番号を使います。
この記事を読むと、次の3つができるようになります。
- 管理番号・呼び名と、場所・面積の対応を一覧にする
- 圃場そのものの情報と、作付けごとに変わる情報を分ける
- 日誌と同じ番号を使い、変更があったときに一覧を直す
記入例は架空です。項目や更新のルールは編集部の提案です。公的資料などは2026年10月1日時点の調査に基づきます。土地の権利や境界、申請・認証の要件は扱いません。

圃場管理は、圃場情報の使い道を確かめてから始める
圃場の一覧で特に必要になる項目は、使い道によって変わります。最初に、何に使いたいかを確かめておきましょう。
| 使い道 | 特に必要な項目 |
|---|---|
| 日誌で、どの圃場の記録か分かるようにする | 管理番号、呼び名 |
| 家族や従業員と場所を共有する | 呼び名、場所の参照先 |
| 圃場別・作物別に作業時間や資材をまとめる | 管理番号と、作付情報(作期・作物) |
| 営農管理アプリに登録する | 管理番号、呼び名、面積と単位 |
農研機構の導入チェックリストは、営農管理システムを導入する場面について、圃場別・作物別に労働時間や資材投入量を把握する活用例を挙げています。
管理番号と呼び名は、どの使い道でも必要です。ほかの項目は、使い道に合わせて埋めていきます。
圃場一覧を作る:管理番号・呼び名・場所・面積
有機JASの様式例では「一覧」と「記録」が分かれている
農林水産省が示す有機JASの記録様式の例では、「ほ場一覧」に、ほ場ごとの番号・通称・所在地・面積などを書きます。作業の記録には、一覧で付けた番号を書きます。有機JASの認証を受ける、または目指す農家などに向けた例で、使用を強制するものではありません。
この記事では、この形を参考に、日常の管理に使う圃場一覧を次のように提案します。
| 項目 | 書くこと |
|---|---|
| 管理番号 | 経営内で付ける短い番号や記号。一度付けたら変えない |
| 呼び名(旧称) | 家族や従業員がふだん使う名前。変えたときは前の呼び名と変えた日も |
| 場所の参照先 | 地番や、地図アプリの共有リンクなど、場所を確かめる手がかり |
| 面積と単位 | 値と単位(aか㎡) |
| 面積の出典・確認日 | どこで調べた値か、いつ確かめたか |
| 使用期間・備考 | 必要に応じて、使い始めた日・やめた日、区画の分け方など |
表計算で一覧にするときは、これらの項目を列の見出しにし、1圃場を1行にします。この記事では、スマートフォンでも読みやすいよう、記入例を1圃場ずつ縦に示します。
1つの圃場として扱う範囲を決める
次に、どの範囲を1つの圃場として一覧に載せるかを決めます。目安は、日誌で作業や作付けを書き分けたい範囲です。隣り合う数枚をいつも同じ作物・同じ作業で管理しているならまとめてもよく、1枚の中で作物を分けて作るなら区画で書き分けます。
管理番号は短く、変えず、使い回さない
管理番号は「A・B・C」でも「1・2・3」でもかまいません。大事なのは、短く書けること、一度付けたら変えないこと、使わなくなった圃場の番号をほかの圃場に使い回さないことです。番号を使い回すと、過去の記録が別の圃場を指してしまいます。
日誌には管理番号を書き、慣れるまでは「A(家の前)」のように呼び名を添えると間違いにくくなります。
地番や地図の位置は「場所の参照先」に書く
地番は、登記所が一筆の土地ごとに付ける番号です(不動産登記法 第2条・第35条)。eMAFF農地ナビの使い方ガイドは、農地の所在・地番は住居住所とは異なると注記しています。
地番を管理番号や名前に使う方法もあります。この記事では、日誌に書く短い管理番号と、場所を確かめる地番を別の欄にする方法を提案します。「場所の参照先」には地番や地図アプリの共有リンクを書き、一覧から場所を確かめられるようにします。分からない項目は推測で埋めず、「未確認」と残します。
面積は「どこで調べた値か」も書く
同じ圃場でも、面積の値は調べた資料や測り方によって違うことがあります。eMAFF農地ナビの使い方ガイドでは、面積欄の値は登記簿に登録された農地の面積で、あぜを含むと説明されています。
また、国土交通省の説明では、登記簿に記載された面積が正確でない場合もあるとされています。
国土地理院の地理院地図のように、地図上で範囲を囲んで面積を測る方法もあります。囲み方で値が変わるため、一覧には「概算」と書いておきます。
一覧には、面積と単位(100㎡=1a)に、出典と確認日を添えます。複数の資料で値が違う場合は、元の値を上書きせず、それぞれを次の形で残します。
面積:__a(地図で囲んだ値には「約」を付ける)/出典:__/確認日:__年__月__日
申請や認証で面積を書くときは、提出先が指定する資料や出し方に従ってください。
家族や記録ごとに違う呼び名をそろえる
同じ圃場を人によって違う名前で呼んでいるときは、次の順で1つにそろえます。
- 家族・従業員の呼び方、日誌やメモ、地図アプリの登録名を書き出す
- 地図や現地で、どの呼び名が同じ圃場を指すか確かめる
- 一覧の「呼び名」を1つ決め、ほかの呼び名は旧称として残す
- 決めた番号と呼び名を全員に伝え、日誌やアプリの登録名もそろえる
手順1・2のように、ほ場・施設のリストを現場と照合しながら作ることや、地図にほ場の位置を明確にすることは、GAP(農業生産工程管理)に取り組む農業者向けの農林水産省の指導マニュアル(青果物)も対策の例に挙げています。以下では「GAPの手引き」と呼びます。
旧称を残しておくと、呼び名を変える前のメモや、家族が前の呼び方で書いた記録も読み返せます。日誌の書き方は農作業日誌の書き方で紹介しています。
作物・品種・作期は「作付情報」として別の表に書く
圃場は年によって変わりにくい一方、作物は作付けごとに替わります。両方を同じ表に書くと、作物が替わるたびに一覧を書き直すことになります。作付けの情報は別の表にし、管理番号で圃場一覧と結びます。
| 項目 | 書くこと |
|---|---|
| 圃場(管理番号・区画) | 圃場一覧と同じ番号。分けて使う場合は区画名も |
| 作期 | 同じ圃場の作付けを区別する呼び方(例:2026年秋作) |
| 作物(品種) | 作物名。必要なら品種も |
| 状態 | 予定・作付中・終了(決まっていなければ未定) |
| 開始・終了の記録 | 日誌のどの記録で始まり、終わったか |
この記事では、同じ圃場の作付けを区別するため「2026年秋作」のような呼び方を使います。年をまたぐ作付けは、種まき・植え付けをした年と収穫する年のどちらで呼ぶかを決めておきます。1つの圃場を分けて使うときは、管理番号は変えずに「東」「西」などの区画名を作付情報に書きます。
GAPの手引きは、出荷・収穫・栽培の記録を日付・ほ場名・品種名などで結びつけ、出荷した農産物の履歴をたどれるようにする考え方を示しています(取組事項11)。日常の管理でも、日誌の「圃場・区画」「作物・作期」の欄に作付情報と同じ番号・呼び方を書けば、作付けごとに記録を追えます。

架空の3圃場で、一覧と日誌のつながりを見る
ここからは、次の架空の経営を例にします。
- 農作業日誌の書き方と同じ家族経営の露地野菜。作業者は山田(経営者)と田中(パート)
- 圃場A・Bは同記事の例と同じ。圃場Cは2026年10月1日から借り始めた
- 圃場Cと、後の例2(10月9日)の記録は、この記事のために足した架空の設定です。同記事の例や集計には含みません
- 地番は架空で、地名の部分は伏せ字です。面積・確認日・作物も説明のために決めた架空の設定で、実在の農地の値や、標準的な規模・栽培時期を示すものではありません
架空の記入例:圃場一覧(圃場A)
| 項目 | 記入内容 |
|---|---|
| 管理番号 | A |
| 呼び名(旧称) | 家の前 |
| 場所の参照先 | 地番:〇〇字△△ 101/地図アプリの共有リンク |
| 面積と単位 | 12a(1,200㎡) |
| 面積の出典・確認日 | eMAFF農地ナビの面積欄(登記簿の面積、あぜを含む)、2026年10月1日 |
| 使用期間・備考 | 記録を始める前から使用。1〜24うね |
架空の記入例:圃場一覧(圃場B)
| 項目 | 記入内容 |
|---|---|
| 管理番号 | B |
| 呼び名(旧称) | 倉庫の裏 |
| 場所の参照先 | 地番:〇〇字△△ 205/地図アプリの共有リンク |
| 面積と単位 | 8a(800㎡) |
| 面積の出典・確認日 | eMAFF農地ナビの面積欄(登記簿の面積、あぜを含む)、2026年10月1日 |
| 使用期間・備考 | 記録を始める前から使用。1〜16うね |
架空の記入例:圃場一覧(圃場C)
| 項目 | 記入内容 |
|---|---|
| 管理番号 | C |
| 呼び名(旧称) | 川沿い(旧称:新しい畑。2026年10月9日に変更) |
| 場所の参照先 | 地番:未確認(貸し手に確認する)/地図アプリの共有リンク |
| 面積と単位 | 約15a(約1,500㎡) |
| 面積の出典・確認日 | 地理院地図で外周を囲んだ概算(あぜを含めて囲んだ)、2026年10月1日 |
| 使用期間・備考 | 2026年10月1日から使用。中央の通路で東・西の区画に分ける。区画ごとの面積は未確認 |
AとBはeMAFF農地ナビの面積欄の値、Cは地図の概算です。3つの面積を足すと出典の違う値が混ざるため、合計を出すときは「概算を含む」と書き添えます。
架空の記入例:作付情報
| 圃場・区画 | 作期・作物・状態 |
|---|---|
| A・全体(1〜24うね) | 2026年秋作・キャベツ・作付中 |
| B・全体(1〜16うね) | 2026年秋作・ブロッコリー・作付中 |
| C・東 | 2026年秋作・だいこん・予定 |
| C・西 | 未定 |
圃場Cは、区画ごとに予定を書く例です。東は作付けの予定を登録し、西はまだ決めていないため「未定」としています。品種は記入例では省略しています。記入欄と同じ形で1件書くと、次のようになります。
架空の記入例:作付情報(C・東)
| 項目 | 記入内容 |
|---|---|
| 圃場(管理番号・区画) | C・東 |
| 作期 | 2026年秋作 |
| 作物(品種) | だいこん(品種は未定) |
| 状態 | 予定 |
| 開始・終了の記録 | 未開始。作付けを始めたら、日誌のその作業日を書く |
例1:日誌の記録から、一覧と作付情報を引く
同記事の例1(10月6日の記録)は、一覧と次のように対応します。
| 日誌の欄 | 記入内容と、一覧での確認 |
|---|---|
| 作業日 | 2026年10月6日(火) |
| 圃場・区画 | 圃場A → 圃場一覧のA(家の前、12a) |
| 作物・作期 | キャベツ 2026年秋作 → 作付情報の「A・全体」の行 |
例2:呼び名の違うメモを、一覧で特定する
呼び名をそろえる前に書かれた、次のメモが残っていたとします。
10/9 新しい畑の草の様子を見た(田中)
一覧の旧称を見ると、「新しい畑」は圃場Cだと分かります。日誌には次のように書き直します。
架空の記入例:10月9日
| 項目 | 記入内容 |
|---|---|
| 作業日 | 2026年10月9日(金)※10月10日にメモから書き直し |
| 圃場・区画 | C(川沿い)、東・西とも |
| 作物・作期 | 作付けなし(東は2026年秋作のだいこんを予定) |
| 作業内容・実施範囲 | 草の状態の見回り |
| 作業者 | 田中 |
| 気づき・未完了事項 | 草の量はメモになく不明。草刈りが必要か、山田と現地で確かめる |
圃場の追加や作付けの変更があったときの更新ルール
一覧は、圃場や作付けが変わったら直します。過去の記録をあとから追えるよう、次のルールをおすすめします。
| こんなとき | 一覧・作付情報の直し方 |
|---|---|
| 圃場が増えた | 新しい管理番号を付け、使い始めた日を書く。ほかの圃場の番号は変えない |
| 呼び名を変えた | 管理番号は変えず、旧称と変えた日を残す |
| 圃場を分けて使う | 管理番号は変えず、区画名を作付情報に書く。ずっと別の圃場として管理するなら、新しい番号の行に使い始めた日と元の番号を書き、元の番号の行にも分けた日を書く |
| 圃場を使わなくなった | 行は消さず、やめた日を書く。番号はほかの圃場に使い回さない |
| 作付けが終わった・替わった | 作付情報の状態を「終了」にして行を残し、次の作付けは新しい行に書く |
見直すタイミングの例は、作付けを始める前と終わったとき、圃場が増えたり減ったりしたときです。日誌を振り返る日に合わせて一覧も確かめると、直し忘れを防ぎやすくなります。頻度は経営に合わせて決めてください。
まず1圃場を書き、日誌やアプリで同じ番号を使う
全部の圃場をそろえてから始める必要はありません。次の3つから始めてください。
- 一覧の使い道を確かめ、よく作業する圃場を1つ選んで、下の記入欄に書く
- その圃場の今の作付けを、作付情報の欄に書く
- 日誌やアプリでも、同じ管理番号と呼び名を使う
記入欄は、手帳や表計算に転記して使えます。
圃場一覧の記入欄
| 項目 | 記入内容 |
|---|---|
| 管理番号 | ______ |
| 呼び名(旧称) | ______ |
| 場所の参照先 | ______ |
| 面積と単位 | ______ |
| 面積の出典・確認日 | ______ |
| 使用期間・備考 | ______ |
作付情報の記入欄
| 項目 | 記入内容 |
|---|---|
| 圃場(管理番号・区画) | ______ |
| 作期 | ______ |
| 作物(品種) | ______ |
| 状態 | ______ |
| 開始・終了の記録 | ______ |
一覧ができたら、日誌の圃場欄にその番号を書いて記録を始めます。営農管理アプリを検討する場合は、登録する圃場の数や地図の扱いを確かめるときにも一覧が役立ちます。アプリを選ぶときの条件は営農管理アプリの選び方|導入前に確認したい7つの条件で整理しています。
この記事の調査・表示について
- 法令・公的資料などは、2026年10月1日時点の調査に基づきます。最新の内容は各資料で確認してください
- 記入例は、地番・面積・確認日を含めてすべて架空の経営です。実在の農家や農地の値ではありません
- 圃場一覧・作付情報の項目、管理番号の付け方、更新のルールは編集部の提案です。申請・認証などで提出する書類の要件を満たすことを保証するものではありません
- 土地の権利や境界、面積の正誤の判断は扱っていません
- 実機での検証、取材、事業者・行政への問い合わせは行っていません
参照した資料
- 農林水産省「有機農産物の生産行程管理記録等の様式例」:様式例の一覧と、使用を強制しない旨。記入方法のリスト系編(ほ場一覧)と記録系編(ほ場番号・作物名)
- 農林水産省「国際水準GAPガイドライン」:GAPに取り組む農業者向けの指導マニュアル(青果物)。取組事項1〜10(基本情報、ほ場のリスト・地図)、取組事項11〜20(記録の結びつけ)
- e-Gov「不動産登記法」:第2条(地番の定義)、第35条(地番)
- eMAFF農地ナビ「使い方ガイド」:所在・地番と住居住所の違い、面積欄の注記
- 国土交通省「地籍調査とは」:登記簿に記載された面積の精度について
- 国土地理院「地理院地図」:操作マニュアル(面積の計測)
- 農研機構「営農管理システム導入成功のためのチェックリスト」:圃場別・作物別のデータ活用











